封印

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 やがてマンションが完成し、立地が良いことから完売したらしく、入居者が続々やってきた。  明るい顔で引越して来る人々が幸せそうで、私は玄関先を掃きながら微笑ましく眺めた。 「みんな死ぬよ」  不穏な声に振り返ると、数メートル先にあの子が立っていた。 「こうやって血を流して……」  表情のない顔にツーッと赤いものが垂れてくる。それはぽたりと白いブラウスに滴った。  みるみるうちに彼女は真っ赤に染まり、血がボタボタと地面に落ちていく。 「ひっ」  私は思わず後退る。 「あそこが死に絶えたら次は横」  3メートル。 「その次は前と後ろ」  2メートル。 「どんどん死んでいくんだよ」  1メートル。  気のせいじゃない……まばたきするたび女の子が近付いてくる。 「た、助けて」  私は腰を抜かして地べたに尻もちをついた。  血染めの女の子は、もう鼻先まで迫っている。
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