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女の子の一人暮らしの部屋に上がるなんて、久し振りだった。部屋はよく片付いていたが、質素であんまり物がなかった。今どきの女の子の部屋でここまで物がないのも珍しい。
「ホクトさん、来てくれて良かった。実は私、不味いことしちゃったかなって思ってたんです」
「そんなことはないけど。ええと……」
僕は取りあえず何か話そうとした。沈黙するとウソを言っていることがバレてしまいそうな気がした。「もしかして、越して来たばかり? カーテン新しいし」
「はい、引っ越したばかりなんです」
「確かにここなら、楽器屋にも近いね。前は親元で暮らしてたの?」
「ええと……」
ユキは口ごもった。
「どうかした?」
「あの、私、ホクトさんに話さなくちゃいけないことがあって。聞いてもらってもいいですか?」
ユキはいつもと違う深刻そうな表情をしていた。
「いいけど、何?」
「この間、シロクマの子供の話をしたじゃないですか。あの前にホクトさん『何でベンチで寝てたの?』って訊いたの覚えてますか? 私、何もないって言ったけど、あれウソなんです。黙っていようと思ったんですけど、あの後ホクトさんが来なくなったから、私があの時に何か隠してるって気付いたから来なくなったのかなって思って。実はいろいろあって……」
「いろいろ?」
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