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「あのベンチで寝てた日、連絡があったんです。『結婚した』って、前に結婚してた人から」  僕は一瞬、ユキの言った言葉の意味が理解できなかった。ユキは今「『結婚した』て、前に結婚していた人から」と言った。つまり「前に結婚していた人から、『結婚した』と連絡が来た」ということになるのだろうか? 「えっ?」  僕はユキの言葉の意味を理解すると、思わず声を上げた。 「私、一年前まで結婚していたんです。でも、結婚していた人に他に好きな人が出来てしまって離婚して。離婚してからしばらく実家にいたんですけど、就職して職場に近いここに越して来たんです。でも、一人だと時間を持て余しちゃうから、何かやろうと思ってピアノを習い始めたんです。で、あの日、『結婚した』って連絡があって……。不思議なんですけど、もう離婚したあの人のことは何とも思っていないはずなのに、すごく悲しくなって。部屋に一人でいると泣きそうだったから、あの公園に来たんですけど、ベンチに座っていろいろと考えていたら、段々眠くなっちゃって。多分、考え過ぎて頭がオーバーヒートしちゃったんです。でも、寝て起きたらスッキリして、まあ、いいかって感じになれたんです。それに、起きたら全然他人の私を心配してずっと見ていてくれた人もいたし、人生、そんなに悪くないって思えたんです」  ユキはそこまで早口で言うと、フーッと息を吐いて僕の方を見た。「すみません、こんなこと話して。話したらホクトさん、私と会ってくれなくなるかもしれないと思って、内緒にしようとしたんです。でも、話さなくてもホクトさんに会えなくなったから、正直に話さないといけないんだなって思って話しちゃいました。イヤですか? こんな話」
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