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 公園のベンチで女の子が横になって眠っているという、日常的に見ないであろう光景を目撃してから数日経った。  僕は地元の楽器屋のスタジオでバンドの練習をした後、仲間と別れると、ふとあの女の子を思い出した。  ここ数日、あの女の子のことをよく思い出す。自分でも何でこんなに思い出してしまうんだろうかと不思議に思う。まあ、公園のベンチで女の子が寝ているなんて滅多にないから、よっぽど印象的だったのだろう。 「――あっ! こんにちは」  後ろから声がしたので振り返ってみると、あのベンチで寝ていた女の子が笑顔で立っていた。 「この間の……」 「覚えていてくれたんですね、この間はありがとうございました。……ギター、やるんですか?」  女の子が僕の担いでいるギターバッグを見ながら言った。 「うん、さっきまでバンドの練習してて」 「すごい、バンドやってるんですか!」 「でも、そっちもピアノやるの?」  僕は女の子が持っているピアノ用の楽譜をチラリと見た。 「実はこの間から、ここの大人向けのピアノ教室に通い始めたんです。小さい頃ちょっとだけやってたけど、なかなか上手く弾けなくて。でも、楽器、楽しいですよね」 「うん」  女の子があまりにも楽しそう笑顔で話すので、僕もつられていつの間にか笑顔になっていた。
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