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「そうだ! これから時間ありますか? この間のお礼に何かおごります!」 「そんな、気にしなくてもいいよ」 「いいんです、私もちょうどノドが渇いたんで。じゃあ、行きましょう。――ちょtt、楽譜買って来るんで待っていてください」  女の子は言うと、サッサとレジの方へ行ってしまった。  レジにいる顔なじみの店員が、僕と女の子の顔を交互に見ながら不思議そうな表情をしている。それもそうだろう、僕はこの楽器屋に女の子を連れてきたことはないし、店員以外の女の子と会話したこともない。しかも、あの店員は新人の頃に僕がちょっと声をかけただけでビクビクしていたっけ。店員も最初は僕のことが怖かったのだろう。  でも、あの女の子は初めて会った時から僕のことを怖がる素振りを全然見せない。僕に対する態度と店員に対する態度はまったく一緒だった。 「お待たせしました」  女の子は戻ってくると笑顔で言った。「あっ、私、ユキって言います。アオヤマユキ。お名前、教えて下さい」 「ホクトマサキ」 「ホクトさんって言うんですね」  女の子は僕の名前を言いながらまた笑顔を見せた。
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