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3.
僕とユキは楽器屋で会うとコーヒーショップに行き、長時間おしゃべりするということを繰り返した。ユキは初めて会った時よりも饒舌ではなくなったが、それでも僕がひとこと言うたびに7~6倍くらいの言葉を返して来た。
僕はユキが楽しそうに話すのを見ながら、この娘は僕のことが怖くなかったのかな? と思った。ユキの態度はあの公園のベンチで初めて会った時から、一貫として変わっていない。つまり一貫として僕を怖がっている感じがないのだ。
特に女の子は初めて僕に会うと恐る恐る近付いてきて、打ち解けた後に「実は怖そうな人だなと思っていたんです」なんて言って来る。そう言われると、僕はやっと見た目より怖くないということをわかってくれたのかとホッとすると同時に、やっぱりこの娘も僕が怖かったのかと淋しい気持ちになる。ちょっとかわいいなと思っていた女の子も、この時点で気持ちが冷めてしまうことが多かった。
「どうかしましたか?」
僕がつい考え込んでいると、ユキが不思議そうに言った。
「その……。やっぱり、最初に見た時、俺のこと怖そうだと思った?」
僕は言ってしまってから、よけいなことを言ってしまったかもと思った。ユキがあまりにも楽しそうにしゃべるので、ユキといる時の僕はいつもよりもかなりおしゃべりになっていた。
「怖そう? どうしてですか?」
「良く『最初は怖そうな人だと思った』って言われるから」
「そうなんですか? だって最初、ホクトさん、すごく呆気に取られた顔していたじゃないですか。怖そうだとか全然思わなかったですけど」
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