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照り付ける太陽が町並みを灼熱に包ませる頃、ある酒場では別の汗が落ちるような、息を飲む出来事が起こっていた。
「私はお前が好きだっ。付き合いなさい!」
「断る!!」
男の即答に周囲はざわめく。
数分前まで陽気に包まれていたその酒場は、今や目の前の衝撃的な告白劇に固まるしかない。
しかもふられるという最悪の事態を目の当たりにしてしまったのだった。
命がない、と誰もが頭によぎる。
「なぜ、私の愛を受け入れられないの?! お前は私の力が欲しくないのかっ」
叫ぶ彼女の腕がすっと頭上にあがる。
途端に、固まっていた人々は机の影や椅子を盾にしながら逃げ惑い始める。
皆の憩いの場が一触即発の戦場(いくさば)に変わろうとは夢にも思わない。
元凶である二人の行く末を勇気あるものはそっと残って見守る。
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