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砂浜の足跡
友達と泊りがけで海水浴に来た。
着くなり泳ぎまくり、その日はかなり早い時間に寝た。そのせいか、朝も相当早い時間に目が覚めてしまった。
寝直そうと思ってもすっかり目は覚めてしまったし、みんなはまだぐっすりと寝ていて、起こすのは忍びない。
だからこっそり外に出て、朝の海岸を散歩することにした。
時間のせいか、海岸には人影はまるでなかった。
気持ちのいい海風に吹かれ、砂浜に足跡をつけながら歩く。その時に、砂浜に誰かの足跡が残っていることに気づいた。
俺と同じように、朝一から散歩をしていた人がいるらしい。もう人影はどこにも見えないが、ずっと続く足跡が先に来た人の痕跡を綴っている。
なんとなく、それを追うように進んで行くと、足跡の軌道が海へと向かった。
どうやら見知らぬ散歩者は、途中から波を浴びながら歩きたくなったらしい。それを証明するように、波打ち際に足跡が残っている。
そう思った時、当たり前のことに気がついた。
砂浜では、ずっと波が寄せては返しを繰り返している。なのに波間の足跡は消えることなく、ずっと先…海の中へと続いている。
誰かのいたずらの可能性もあるが、その事実に気づいた瞬間、俺の背筋を悪寒が駆け抜け、俺は宿へと一目散に逃げ帰った。
そして今、みんなが楽しく泳ぐ姿を、今日は疲れたから甲羅干しをしていると言い訳をして、俺はずっとパラソルの下から見つめている。
砂浜には海水浴客の足跡が入り乱れ、波打ち際に今もあの足跡があるのかどうかは判らないけれど、とりあえず俺はもう、この海には近寄らない。
砂浜の足跡…完
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