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「俺はお前のことでは一切手抜きはしない。お前だけを見る、そう言ったハズだ」 「そ、それは……」 「信じられないのか」 「違ッ」  青年は弾かれたように顔を上げ、激しく首を横に振った。それからすぐ、そんな仕草をしてしまったことを恥じるみたいに両腕をクロスさせて顔を隠す。  主人は破顔してその腕を引きはがし、言葉の続きを促すように茹で上がった小造りの顔を熱心に見つめた。  「で、でも、……ちょ、ちょっとは、優しくしてくれよ……いきなり、そんな、」 「そんな、なんだよ?」  青年の顎を持ち上げ、からかいの目を向けた主人に、青年は綺麗な目を揺らめかせて唇を噛み、それからふいに目の前の分厚い胸板に、トンと額をつけた。 「そんな……、お、おっきいの、…………オレ、こわいよ」 (ドッ、キューーーーン!!! アカン、キた! 今のキた! なんなん! なんなん兄さんアンタ、かわいすぎやでぇーー!!)  これにはどうやら主人も撃ち抜かれたらしく、クッと短い息を洩らすと、奪うみたいに華奢な身体を思い切り抱き締めた。 「――クソッ、俺を殺す気か」  うめくような声に、ハッとする。そしてふいに気付いた。主人があの日、苦悩するように漏らしていた言葉、壁を叩く拳。 (そうか、あれはこの兄さんが原因やったんやな……)  妙に納得して頷く。
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