14/14
前へ
/14ページ
次へ
 それから主人が命じた通り、青年は主人の身体を怖々とした手つきで洗い始めた。  不本意だという態度を見せながらも、広く頑健な肩や、筋肉の盛りあがった広い背中をどこか切ないような、潤んだ瞳で見つめている。 (はあ、そうか、……この二人は、そうなんやな……)  床に転がったまま、私は何故か温かい気持ちになって、静かに二人を見つめていた。 「前もだ」  主人が短く告げると、青年はおずおずと主人の前に回り、強い視線にさらされながら、肩、胸、腹、脚と順に洗い、最後に、再び力を取り戻して男の性を漲らせているそれを、真っ赤になりながらも優しく繊細な手つきで洗い始めた。  主人は時折熱い息を吐きながら、愛おしげに目を細めて青年を見つめている。そしておもむろに手を伸ばすと、大きな手の平で青年の頬を優しく包み込んだ。   ビクリと肩をすくめ、怖々と顔をあげる青年の目は潤んで、今にも泣きそうだ。  その顔に、主人がフッと微笑む。 「……可愛いな、お前」  思わずといった様子で告げられた言葉に、青年はこれ以上ないほどに目を見開き、それから唇を震わせて何かを言おうとしたが、結局何も言えずに俯いてしまう。  主人はもう一度小さく笑うと、床から私を拾い上げ、自分と青年の身体についた泡を洗い流し、湯を止めて、珍しく静かにフックに戻してくれた。  力の抜けたような青年をそっと抱き寄せ、潤んだ目許に小さくキスをすると、濡れた髪を優しく梳いてやりながら耳元に囁いた。 「――ベッドでは覚悟しろよ」 ***************************************************************** 『イン ザ ベッドルーム』へ続きます! お読みいただき、ありがとうございます!
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

388人が本棚に入れています
本棚に追加