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カタンッといささか乱暴にドアが開かれ、乾いたこの空間に逃げ込むように入ってきたのは、この家の主人よりも随分ほっそりとした青年だった。
閉めたドアの方を警戒するように振り返りながら、何も身に着けていない白い身体を庇うように、細い両腕で自身を抱き締めている。
(……え、誰や)
空き巣か? いやいや空き巣だったら服は着ているだろうし、第一この空間には奪うようなものは何もない。
隙がなく整った顔立ちの青年は、自分の唇を幽かに震える手で押さえながら、しばらく落ち着かないようだったが、しばらくしてふと思い出したように私を掴んで壁のフックから外し、湯と水の色を確かめてからキュっと軽く水栓をひねった。
初めから適切な温度と湯量でシャワーを使い始めた彼は、とても慎重で生真面目な性格であることが窺える。
自慢じゃないが、このバスルームの水圧は異常に高い。
この家の主人はここに越してきた当日、力任せに栓をひねったため、爆発したみたいなシャワーに攻撃されて半ギレになっていた。
いや……、そんなことはいい。問題は、なぜ見知らぬ青年がここでシャワーを浴びているのか、ということだ。
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