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青年は一通り揃ったシャンプーやらボディソープやらをぎこちない手で触り、湯を出したまま私をフックに丁寧に戻すと、まずシャンプーを少量手に取って、手際よく髪を洗い始めた。
それから泡を洗い流し、少し長めの黒髪を、両手で軽く絞って水を切る。
と、そこでまたカタンッと音がして裸の男が入って来た。
乱入してきた、と言った方がいい派手な登場だ。
「なっ…、入ってくるなって言っただろっ」
青年が振り向いて男を認めるなり、慌てて自らの身体を隠すようにその場にしゃがみこんだ。
「お前が遅いのが悪い」
傲慢に言い放ったのは、その態度に似つかわしい堂々たる体躯の美丈夫、この家の主人だ。
鋭い眼差しが、青年のほんのり色づいた艶めかしい裸身を無遠慮に眺めまわす。
「遅いって、まだ入って10分も経ってない…、な、なんだよ」
「赤いな」
「な、なにが」
主人はニヤリと笑って、自分の唇を長い人差し指でトン、と示した。
「!……そ、それは…、おまえが、玄関で30分も……!」
(え…っ、なに? なに!? 30分もなんなん!?)
最後まで言えずに真っ赤になった青年は、また腫れぼったい唇を手の甲で押さえて目を逸らす。
主人は恥じらう青年の姿にひどく惹かれた様子で、尚も意地悪く、白い身体を強い視線で嬲り続けた。
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