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一見すると、Ω(オメガ)にしか見えない麗人(れいじん)の吐息が悩ましく室内に響く。
男の――時として、女の獣欲(じゅうよく)すら刺激する特性があるのは、Ωだと言われている。
α(アルファ)、β(ベータ)、そしてΩ(オメガ)。
それは、俺たちの世界を構築しているものの、要となっているものだ。
この世には、男女という二つの性と、αβΩという三つの階位(クラス)がある。
αは生物としての能力が最も秀でている支配級。肉体に優れ、容姿が整い、頭脳明晰で、他者を惹きつけ、魅力する力がもっとも強いと言われている。必然的に権力者が多いのも、このαである。
常に選ぶ立場で、多くのβとΩは彼らの目に留まり、番……つまり、夫婦になれることを望んでいる。
αと番になることができれば、どの階位の人間とて順風満帆な人生が待ち受けていることは、わかりきっているからだ。
βは、能力自体は平均的だが平穏に生きることを許されている階位。可もなく不可もなく、だが、何よりも安全な生活が確保されている。個々の差はあるだろうが、能力と努力次第で、αのような支配級の生活に食い込むことができる。人類の大半が、このβである。
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