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そんなことを何度も繰り返しているうちに、俺は湯あたりをしていた。
「いろはちゃん……なんでこんな姿に」
真っ赤にゆで上がっている俺を寝室に運んでくれた森羅さんが、呆れたというか、戸惑うように俺を見ている。
その手にはうちわがあって、先ほどからずっと俺を仰いでくれていた。あまりにも帰ってこない俺を心配して、様子を見に来てくれたのだ。
「面目ない……いや、気合が入って……」
本当は緊張しすぎて、現実逃避をしていた結果だとは言えずに、適当に言葉を選ぶ。
「気合を入れてくれるのは嬉しいけど、無理はよくないわよ。……今夜は、やめておく?」
「え?」
驚いて声が出た。今夜の、交尾解禁をカレンダーに印をつけるくらいに心待ちにしていたのは、森羅さんなのに……
「……いろはちゃんの身体がそんな状態で、無理なんかさせられないわよ。一日くらい伸びたって、別にかまわないし」
微笑む森羅さんに、胸が熱くなった。
この人に長年我慢を強いていたのは俺だと言うのに、それでもなおかつ、彼女は抑制しようとしているのだ。俺の為に。
「……いや、森羅さん」
覚悟が、決まった。
「交尾をしよう。俺と一緒に」
恐怖や不安、緊張なんかは無理やり飲み込んで、俺は挑むように森羅さんを誘った。
「い、いいの?」
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