◆1 アヤマチの夜

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 そしてΩは完全に支配され、搾取される側である……どの階位よりも、性的魅力にあふれている人種で、他の階位よりも下に見られることが多い。  繁殖期になれば、男女関係なく子供を成すことができるのはΩだけだが、Ωは性的魅力と繁殖能力の高さと引き換えに、日常を平穏に生きることを、許されない。  Ωには他の階位と違い、発情期と繁殖期というものがあり、その時期になると他に何も手がつけられないほどに……肉欲の渇望に襲われてしまうためだ。  学業にも、就業にも影響が出てしまう時期を年に数度も迎えてしまうΩが、そういう意味で他から下に見られてしまうのは、仕方がないのかもしれない。Ω以外曰く、いつでも“誘っている”ように見えるのだという。特に発情期のΩは、全裸で誘いながら歩いているようにしか見えないのだそうだ。  世間一般的に、Ωは性の象徴なのだ。ポルノ雑誌の表紙と似たような印象なのだろう。  抑制剤(よくせいざい)が誕生し、一般流通した昨今でも、意識改革はできていない。  隣で半裸をさらしている人も、特徴としてはΩにしか見えない。美しく、扇情(せんじょう)的。 「………………」  目覚めて、一言述べた後は無言で自身の身体と、俺の身体を見比べている。  きっと、自分が俺……記憶にない大男とベッドを共にしている現状が自分でも、信じられないのだろう。     
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