◆1 アヤマチの夜

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 酒を飲んでいる間に交わした会話で、相手の好みが可愛らしく美しい人間だということを、俺は知っている。その好みとは、俺は一ミリもかすっていない。  それを知っていて、俺は誘惑に逆らえなかった。その結果、俺はこの人をひどく、傷つけてしまったかもしれない。そのことを、心より深く反省するけれど後悔はしていない。  俺も、言葉を発することなく煙草をふかしていた。  あまり吸う方ではないのだが、間が持たず……それなりに動揺しているのを隠す為に、喫煙で平静をよそっているのだ。  後悔こそはしていないけれど、冷静であるとは、言い難かった。俺にとっても、昨夜の出来事はイレギュラーなのだ。今まで、俺の人生に起こりえるとは一度として思ったことはなかった。初めて出逢った相手と、身体を合わせるなんて。  誰だって、初めての体験には……身がすくんでしまうものだ。  例え、表面上は欠片もそう見えなくとも。  ちらりと、横目で隣の人を見る。綺麗な人だ。本当に。  寝起きだというのに、男女の美を超越している。  改めて自分たちの状況を俺も、顧みてみよう。  五人くらいは一度に寝ころべるような巨大サイズのベッドに、裸身を並べて横たえる二人。  まあ、俺たち二人のことだ。     
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