かをりと出会ってから

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かをりと出会ってから

かをりと意思伝達が出来るようになってから、マモルの人生はイキイキとするようになった。 それまでは、何となく通勤電車に乗り、スマホで通勤時間をつぶしながら会社にいき、 会社では庶務課で雑用をこなしているうちに十一時半近辺になる。 昼御飯は何をしようかと考えて、仕事も上の空でそわそわしだす。 お気に入りのラーメン屋「ゲンちゃん」の席が空いていれば、今日は「ラッキー」と思って、好物のタンタン麺をひとりで食べる。 昼御飯後は、眠気を必死にこらえて、三時のお茶タイムを待つ。 お茶タイムのあとは、「後、二時間か」と呟きながら、残りの雑用をして定時の終了時刻を「今か、今か」と待っている有様だった。 この光景は小さいころ冬の動物園にいくと、動物たちが自分たちの部屋に戻る時間になる夕暮れになると、頭で鉄冊をゴンゴンとたたいている光景にそっくりだなと思う時がある。 そして、小さい時に描いていた飛行機のパイロットになりたいという夢と大きくかけ離れた現在に「脱力感、虚無感」を感じることがある。 ラインが入り、婚約者の有里と夕飯にいくときもある。 いつもは、そのまま帰り、近所のコンビニで買った弁当を買い、気分が良い時はつまみと缶ビールを買うこともあった。 家に帰り、テレビをかけながら、弁当を温める。 世間一般のサラリーマンとは異なり極端に早い夕食にありつくことが多かった。
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