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数日後、事態が収束したのを確認した葵は読子とヒカルに頭を下げた。人魚書店の座敷で待ち合わせをしたところに現れた葵は、お礼として二人にケーキを手渡す。
「これ、ジュールのロールケーキです。電車で本店まで行って買ってきたので食べてください」
「ありがたく頂くわね」
謝礼を済ませて軽い談笑ののち、非番の葵は先に帰宅した。
ヒカルはその後ろ姿を見てからケーキの箱を開けたのだが少し驚いてしまう。
「葵ちゃんも帰ったし。早速頂いちゃおうか……って、でかい!」
ヒカルは切り分けられた一人前を想像していたが、実際はロール一つが丸々入っていた。しかもヒカルと読子でそれぞれ一本。
そろそろ糖分の取り過ぎも考えなければ美貌も保てないと思っていたヒカルにとってこの量は多すぎる。
「おひゃひに!」
「読子ちゃん、アンタは~!」
そんな女性らしい悩みを尻目に読子は大きく口を開けて下品にケーキを囓っていた。
自分と違って死も老いもない呪われた体である読子は、逆に言えばいくら食べても太りもせず病気にもならない。ある意味で恵まれていてズルい。
「いい! 今日だけは解禁する!」
横で親友が貪り食う姿に逆ギレしたヒカルはつられてケーキに齧り付く。体重計という闇が彼女を襲うのはそう遠くない日であろう。
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