本屋さんと闇のコンビニエンスストア

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「でも彼女を担ぐためにずいぶん手間をかけたじゃないか。その時間で自分から男の子に声をかけた方が良かったんじゃないか?」 「それが出来れば苦労しないわ」  彼女の思考回路にヒカルは余計悲しくなった。  確かにそうだ。積極的になればいいなんて、受け身の人間にとっては酷な選択肢なのだ。同性に嫌がらせしても心は痛まないが、異性に向ける勇気は持ち合わせないからこそ彼女は受け身なのだろう。  男でも女でも受け身の人間はみなこういうものだ。だからこそ負の感情を貯めこみすぎた受け身の人間はこうして積極的になれる側面に余計な力を注いで爆発してしまう。  異能探偵として似たような理由で異能犯罪に手を染める人間を多く見てきたヒカルにとってはよくいるチンピラにも彼女の言い分は似ている。被害者の話から推測して犯人像を予測し正解していた友人の鋭さに「たまにはこっちの仕事も手伝って貰おうかしら」と思いながら、ヒカルは両手を叩いた。 「ご苦労さま。闇のコンビニエンスストアもその嫉妬心も、ぜんぶ忘れてしまいなさい」  手を叩く音と共にテーブルに佐知は伏せて、この日を境に葵を悩ませる「闇のコンビニエンスストア」の怪奇現象はピタリと止んだ。 「店長、それに円さん。ありがとうございます」     
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