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本屋さんと闇のコンビニエンスストア
この日の人魚書店は静かだった。
客もまばらで大きな問題も起きず、バイトの働きも順調だった。
奥の座敷で古雑誌を読みふけっていた読子が気がつくとこの日の営業時間は終わっていた。
「店長。帰る前に相談に乗って貰っても良いですか?」
そう言ってきたのはこの日最後のシフトに入っていた葵だった。
「構わないわよ。葵ちゃんから相談だなんて、好きな子でも出来たのかしら」
「ナイナイ!」
読子にからかわれて葵は首を横に振る。
ではどんな相談だろうかと読子も隠れた目で葵を見つめ返した。
「与太話みたいな噂なんで、知らなければスルーしてくれていいです。ちょっと教えてもらいたいことがあって」
「何かしら」
「店長は闇のコンビニエンスストアって知ってますか?」
闇のコンビニエンスストア。
聞き覚えが無いとは言わないが、なぜ彼女がそんな言葉を急に口にしたのかと読子は小首を傾げた。
「言葉くらいなら」
「どこにあるかまでは知りませんか……実は、大学の知り合いがこう言っていたんです───闇のコンビニエンスストアから闇がやって来る。その時は私もアンタも無力なゴミ。せいぜいそれまでくだらない日常を謳歌しなさいって」
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