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ギル
君はどこに墜ちたんだい?
もう 死んでしまったのかな……
羨ましいかな 少し
俺はまだまだ 死ぬことを許されない
13年後 ファタルが真に聖地へと御降臨あそばされる お手伝いをしなくちゃならないんだ
それまで 君には 会えない
ルキアノスはエルンストの肩に手を置き、眼を合わせた。
彼の眼の中から、その記憶をエルンストは捉えた。
『その奥にいるというファタル、ここにお見せいただきたい!』
『反逆者、ルキアノスを追え!』
我に返ったエルンストは、ルキアノスの見せたヴィジョンから、腕の中の赤ん坊が真のファタルと知った。
「女神」
しかしファタルは、まだ無垢なあどけない赤ん坊だ。誰かの庇護が必要な、無力な存在だ。
「頼む」
ルキアノスは、薄れゆく意識を振り絞ってエルンストに呼びかけた。
「ファタルを、何とか守って欲しい」
「13年後、ファタルを守る真の騎士たちが現れる」
数条の流星が、ゆっくりと天を駆けてゆく。まさにあの星が、その騎士たちなのだろうか。
(だとしたら、まさしくこれらは『ファタルの予言書』どおりということになる!)
エルンストは、感嘆の声を上げていた。
今一度、若者へと視線を落としたエルンストは、やや焦っていた。彼は傷を負っている。早急に手当てが必要なのだ。
しかし、そこにはもうルキアノスの姿はなかった。
若者の後には、聖獣・タンの甲冑だけが残されていた。
それは予言書に書かれた、身を挺してファタルを救った人間。
「聖獣・タンの神騎士!」
彼は命を賭して、ファタルを護ったのだ。ならば……この私も!
引き締まったエルンストの顔と決意だったが、赤ん坊の声と笑い顔は本当にあどけない。
女神と言うより、まさに可愛らしい赤ちゃんのそれだった。
エルンストは、我知らず笑顔になっていた。
ルキアノス
君は深い眠りについたんだな
13年後 再び目覚める時まで
叶う事なら 私も目覚めたい
そしてジーグを救いたい
彼の魂を 救いたいんだ
だけど 信じてくれ ルキアノス
私は 君を 愛している
それだけは 信じてくれ
愛してるよ ルキアノス
ギルの遺体は、見つからなかった。
そして彼の行方を、誰も知らない。
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