第一章 罠

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 寝室のやや控え目な照明の明かりが、二人を包んだ。くず折れるように寝台に横たわるルキアノス。  彼を見下ろすと、たまらない優越感が湧き上がってくる。  靴を脱がせ、シャツを脱がせ、さらにボトムまで脱がせようとしたところで、さすがにルキアノスはもがいてきた。 「や……めろ……」 「苦しいだろうから、脱がせてやってるんだ」  嘘ではない、はず。  しかし、素裸になったルキアノスを眺めやり、もうここで引き返せない自分も解かっていた。初めから、こうするつもりで彼を部屋に連れ込んだのだから。  そして自分も一糸まとわぬ姿になると、彼の上へと被さっていった。  ルキアノスの髪を指で遊びながら、ギルは貪るように唇を重ねた。  舌を差し入れ、柔らかな彼の咥内を蹂躙する。  面白いことに、ルキアノスは嫌がるどころかそれに応えて舌を絡ませてくる。  濡れた音を響かせ、ギルを求めてくる。  逞しい腕が首にまわされ、強く抱きよせてくる。その盛り上がった筋肉に、ギルはやんわりと軽く歯を立てた。 「ん、んぁッ」  ルキアノスの上げる声は、痛みからくる苦痛ではなく性欲を感じさせる艶がある。それを確かめた後、歯型の後を丁寧に、執拗に舐めた。  舌を肌に這わせるたびに、震えるルキアノスの体。自分も首筋を吸われながら、ギルは淡々と彼を愛撫した。  何だこれは。  脳が滾りそうだ。  意識が薄い皮膜で包まれ、夢か現か解からない。    ただ、眼の前の白い首にかじりつき肌を擦り付けた。温かな血の通うギルの喉笛をしゃぶり、鼻を鳴らした。  嘘だ。  ギル、俺を起こしてくれ。  これは夢だ。  夢?   夢ならそのまま身を任せてもよいのでは?  あまりにも蠱惑的な、ギルの白い体。手のひらで撫でると、絹のようにきめ細かで吸い付くように馴染んでくる。日に焼けて武骨なこの手には勿体ないほどの、清らかさ。 『媚薬ってぇのはさ、ヤりたいと思ってなきゃ効かねえもんさ。催眠術と同じでな、盛られてもその気がなけりゃあ、無駄ってこと』  以前、ニネットがしたり顔でそんな事を言っていたっけ。  では、俺は。  俺は、こうしたいと思っていたのか?   ギルと。この幼い時から共に励まし合い、競い合い、高め合ってきた盟友と、淫らな行為に耽りたいと?
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