プロローグ

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 女神ファタルが現世に降りし時、闇の眷属リクィスとの最終戦争が勃発する。  これは聖地カラドに伝わる口伝である。 「最終戦争とはいえ、数百年に一回の割で起きてるけどな」 「法皇様は、今度こそ決着を付けるおつもりだ」  まもなく、その女神ファタルがこの世に現れる。  このような予言を明らかにした法皇は今、神の騎士12名を前に『ファタルの予言書』を開いていた。  重厚なローブを纏い、素顔が見えない仮面を被っている。  そして、有機メタルでできた数本の爪で人体に食い込んだ仮面によって、その声は人工的にひとつの声紋を形作っている。  教皇の聖なる仮面を付けると、個が消える。身に付けた者がどうであれ、教皇の声、ひいては教皇の身体つきに変化するのだ。  その仮面の下の素顔を知らぬまま、神騎士のルキアノスとギルは彼の次の言葉を待っていた。  今夜、この月の下で次代の法皇が指名される。それは自分かもしれないのだ。  泣いても笑っても、それは『ファタルの予言書』にあらかじめ記されているともいう。  重々しく、法皇の声が12名の神騎士と神官たちの侍る神殿に響いた。
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