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「新しき法皇は、聖獣・タンの神騎士ルキアノスおよび、同じく聖獣・ザンの神騎士ギルいずれかとする」
ざわ、と動揺が広がった。
古来より、次代法皇は一名のみ選出されてきた。二名のうちどちらかにする、などという事例は聞いたことが無い。
しかし、当の法皇は周囲のざわめきをまるで無視して締めくくった。
「全ては女神ファタルの標によるもの。ルキアノスとギルは、今後なお一層精進することだ」
「はい」
「仰せの通りに」
法皇が退場し、儀式は終了した。
途端に仲間たちが、ルキアノスとギルとを取り囲んだ。
「やったな、おい!」
「次代の法皇様、バンザイ!」
「よせよ、くすぐったい」
「まだ、決まった訳じゃないんだ」
明朗快活なルキアノス。
品行方正なギル。
どちらも法皇にふさわしい器の持ち主であることは、誰もが納得するところだった。
ルキアノスたち神騎士は、ファタルの僕である12の聖獣を名乗ることを許された選りすぐりの戦士だ。
レアメタルを惜しげもなく使って作られた聖獣の甲冑を身に付け、誰よりも速く駆け、高く飛び、文字通り神の一撃を振るう事のできる特殊部隊である。
古くから歴代の法皇は、この神騎士たちの中から選ばれてきた。
そして今回もまた、一人の神騎士が法皇となる。
しかし今現在は、二人。
二人の神騎士が、法皇の座を懸けて争う事になるのだろうか。
「ケンカすんなよ? 法皇様にチクるぞ」
「喧嘩なんかしないさ」
「今まで通り、仲良くするんだぞ?」
「あたりまえだ」
仲間たちに茶化される中、ルキアノスとギルは素直にそう答えていた。
その返事が次第に歪んでいく未来など、まだ気づくことなく。
運命の輪が、ごとりと音を立てて回り始めた。
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