第一章 罠

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 会議のレジュメが電子端末から紙に戻されたのは、このニネットのせいである。あろうことか、会議中にどこから引っ張ってきたのやら、いかがわしいピンク画像を眺めていたのだ。  オブラートに包んだような理由をあげて、会議における電子端末使用は廃止になったが、何が原因でそんな羽目になってしまったのかは今やカラド中の人間が知っていることである。  それでも悪びれることなく、ニネットはギルにまたくだらない暇つぶしを見せてきた。  ニネットの指先が分厚いレジュメの角を少しだけ持ち上げて、ぱらぱらとめくる。すると、そこにペンで落書きされたいたずら書きが動いて見えた。  稚拙だが男女が後背位で交わっていると解かるこのいたずら書き、彼の指がページをめくるたびに男の腰が卑猥に動く。  まったく。  自分より3つ年下の20歳とはいえ、もう分別ある年齢になったというのに、まだこんなことばかり考えているのか、この男は。 『一度きりの人生、好きなように生きなきゃ損。死ぬ間際に後悔だけはしたくないねぇ』  いつか彼が、そう言っていた覚えがある。  割り切った人生観。  その言葉通り、彼は好き放題ふるまい生きている。  裏も表もない。  こんな風に、会議の最中にさえ自分勝手なことをしている男なのだ。
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