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うらやましい、と思わないこともない。だが、そうして生きていきたいとは思わない。
ギルは、ニネットのように勝手放題生きる自分は好きではない。
自らを律し、他者に敬われ、ルキアノスと並んで法皇候補となった生き方が、性に合っている。
そこで、ふとギルの脳裏にルキアノスの顔が浮かんだ
ルキアノス。
彼もニネット同様、裏表なく自由に振舞ってはいないだろうか。
己の素をさらしながらも、ギル同様に自らを律し、他者に敬われている。その上、慕われている。
ちくり、とギルの胸に小さな棘が刺さった。
最近は特にそうだ。年を重ねるにつれ、ルキアノスのことがやたら気にかかるようになってきた。
それは、法皇候補として並び称されるようになってから、さらに頻繁になった。
私は、ルキアノスを意識している。
神騎士同士の同僚としてではなく、何かしら特別な感情。
良きライバル、と言えば聞こえはいいだろうが、そう簡単に片づけられるような単純な感情ではないことは自分でも解かっている。
「では、質疑応答に入ります」
司会の声に、ギルは我に返った。
ルキアノスのことは頭から追い出し、メモに取っておいた懸案事項に目を通し挙手した。
「市民監視機を市街へ導入する件に関して、問題があります」
真面目なギルの声に、ニネットは苦笑いしてせっかく作ったパラパラマンガを黙って閉じた。
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