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『今お前何してんの』
『もち、病院なう』
『ww』
帰ってきた二文字の英語を見て、「マジしゃれになんない状況なんだけどな」と呟く。
右足にギプスがつけられ、包帯がグルグルと巻かれていた。今日の朝、登校中に、車にはねられたのだ。
朝早くの出来事で、あの運転手も眠気が残っていたから……、と言い訳したいところだが、そんなはずはない。もうすっかり周辺も明るくなっている時間だった。
俺はいつものように、自転車を漕ぎながらケータイをいじっていたのだ。非は自分にある。
しかもそれが右側通行だったのがいけなかった。
向こうからやって来た別の自転車と衝突しかけて、無理に避けようとしたので、車道へ出てしまったのだ。
でも、俺はその車道にそんに恐怖を抱いていなかった。
なぜなら、雰囲気からして、赤信号だと思っていたからだ。車が走っている気配が全然しなくて、てっきりみんな停車中でガソリンを空吹かししているのだろうなと想像していた。
だが、それから俺は乗用車にあっけなくはねられ、道路上で転がって、行き着いた先がこの病院だ。人生色々あるのな。
学校の授業は予定通り進んでいく。
ちぇ、この俺様がいないってのに、よくみんなは授業に集中できるもんだな。
普通なら「病院に行かせてくれぇ!」って叫びながら暴れて、教師三人がかりで押さえつけられるくらいに発狂するか、少なくとも大号泣はすると思うんだがなあ。
俺は右足に触れてみる。
別になんともない。
コンコン、と叩く。痛くない。
「おい、これ過剰包装系の奴じゃね?」
心配になって、足を上げてみた。
途端、激痛が走り、ベッドに腰掛けたままうずくまってしまう。
「………っつぅ」
もうこれは安静しとかなきゃヤバいな。
この件で懲りなきゃ、次はどうなるか……、などと思い巡らせて、反省を始めた。
けど、けどね。
「………………………お」
バリンゴシャンという音が耳に痛いくらい響いた。
その瞬間、大型トラックが病院に突撃して来て………、体が潰される。
これは完璧に俺のせいではないよね。
(生き延びた直後に殺されるとか、心折りに来てるだろ、これー)
げんなりとした表情で、ゆっくり立ち上がる。
………、あれ、立ち上がれちゃった。
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