私はココニイルヨ。

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私はココニイルヨ。

 あぁ上がって上がって。あ、それね。こんな廊下に置いてあるの気になるでしょ。こんな大きな柱時計。 ――由来を知りたい?  じゃあさ、私の部屋で話してあげるよ。気になるでしょ。  昔、まだ嫁入り道具を持たせるのが普通だった時代。タンスとか、化粧箱とかを持たせたらしいんだけど、この家では柱時計だったんだって。  でね、あの柱時計。いわく付きなの。  あるとき、あの柱時計を持って嫁入りしたお嫁さんがいたそうなんだけど、生まれたのは双子の女の子だけ。跡継ぎになる男の子が生まれなかったんだって。  それで結構嫁入り先で姑さんにいびられたんだって。で、何だかんだあって、良くしてくれてた使用人と奥さんが子供を置いて駆け落ちして出ていったんだって。    大変なのは残された双子。そりゃもういじめられたんだって。  毎日毎日いじめられる内に、二人だけの秘密の隠れ場所を作ったの。それがあの柱時計。小さい子だったら、こっそり入れる位に大きかったの。  でもね、地震が起きた時にたまたま隠れてて……。  それからなんだ。あの柱時計から時々子供の呼ぶ声が聞こえるだ。 『ココダヨ……ココニイルヨ……』って。
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