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「何読ませてんだ、このクソバカ野郎!てめーの文章は読みにくいんだ!情景が全然想像できない!まったく登場人物に感情移入できない!まったくだ!てめーは才能ねーんだ!とっとと諦めて筆を折れ、このしょうもねークズが!」
とっても親切な指導をしてくれているのは編集の通称ドナリさんです。ドナリさんは、それはもう、それはもう、立派な編集者。ネットで色々な小説家のたまごを集めてデビューさせようともくろんでいる、始まったばかりのネット小説メディアの若手編集者なのでございます。
ドナリさんのすごいところは、大してラノベにも興味なく、大して文学にも興味なく、大して編集の知識もないにもかかわらず、このように口汚い言葉で新人を罵倒するところにあります。この人がネット小説メディアをやっているのは「何となくもうかりそうだから」。なかなか最低ですね!大人って素敵ですね!こういう人が「鬼の編集」とか呼ばれてもてはやされているんです。実際のところ、この口汚い指導で目が出る作家もいます。すごいですね。世の中、不思議なことだらけです。
「おう、てめーのクソつまらねーファンタジーもう一度読ませてみろよ!どうせ逃げ込みたくなるような世界も書けねーんだ、てめーみてーな無能は!俺が指導してやるんだから感謝しろやこのクソ野郎!」
私は、はーいと言いながら私の作品を読ませてあげました。なんと親切なのでしょう、私は。こんな無礼な人のもとは早く去ってもいいはずです。しかし、正直で向上心のある私は、わざわざネットにあげた小説をプリントアウトして紙の束にして、この怒鳴りまくっている編集に見せてあげているのです。
「まずこの出だしからしてクソだな。『私は異世界に飛ばされた。それはとてもファンタジーな世界だった。』適当すぎ!どんな異世界なのか1ミリも伝わらねーわ!その後の展開もどこで誰が何をやっているのか極めて分かりにくい!分かりにくいんだ、お前の文章は全てにおいて!もっと具体的に説明しろ、それも自然なかたちで!」
プリントアウトした小説をもうくしゃくしゃにして、赤いボールペンで次々と×をつけていくドナリ編集。ボールペンのカッカッという音が子気味良いほどです。私は、もう彼の勢いにハイハイと、機械的に返事をすることしかできませんでした。ああ、なぜ持ち込みをしようと思ったのだろう、私。ここまで口汚い人にあたるなんて。
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