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ひどいこと言われました
「おう、この無能がよ!お前さ、ちょっと顔可愛いからって調子にのってんだろーが!ラノベとか書いてみたら可愛い女流作家としてデビューできるかな?とかクソ無駄な夢見てんだろう!あめーんだ無能!てめーみてーなうすいバカがやっていけるような世界じゃねーんだ!この世は競争社会で能力のねー奴は罵倒されて、何も残せず、無様に死んでいくんだ!てめーもそうなる!俺が断言する!てめーはせいぜい年収の低い男をつかまえて共働きでやっていくものの、相手への不満が爆発して離婚するような道辿るんだどうせ!だから一人で生きていけるようにまっとうな道歩め!俺は親切に言ってやってるんだ感謝しろこのバカ女!」
なんとひどい言い方でしょう。セクハラとパワハラの応酬です。そして、ちょっとひっかかるのが、「顔がちょっと可愛いから」っていう。これは何でしょうか。
「あの、お言葉ですが。私は別に自分の顔が可愛いと思ったことはありません。25歳の普通のOLです。ライトノベルみたいなものを書いてみようと、あらためて初挑戦してみただけです。初挑戦の人に対して、ちょっとひどい言い方が多すぎると思います!」
ああ、私は思わず本音を言ってしまいました。しかし、そんな心の叫びも空しいほどに、編集部内は冷たい空気が流れています。編集部には6人ぐらいの人がいて、忙しそうに他の編集の人がパソコンでカタカタ何かを撃ち続けています。ドナリ編集は私の顔をにらみつけてきます。書類とか原稿らしきものがたくさん乱雑に置かれているデスクで、ふんぞり返っています。
「それに、年収の低い男をつかまえての話とか、私が書いた小説と全然関係ないじゃないですか。セクハラですよ、すごく失礼だと思います。それに、その、こんなこと言いたくもないんですけど、正直、私の母親は父と離婚しています。相手への不満が爆発して離婚の道、ってまさに母はそういう道をたどりました。でも、私はそれが悪いことだと思いません。母は女手一つで私をきちんと育ててくれましたし」
私がこの話をすると、ドナリ編集は「あ、ちょっとまずいこと言っちゃたかな」という表情をしました。そこはちょっとしてやったりです。ドナリのメガネの奥の目にわずかな反省の色アリでした。しかし、ドナリ編集はそんなことで手をゆるめるような人ではありません。
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