3人が本棚に入れています
本棚に追加
異世界に行きました
「うるせーバカ野郎!それは、こう、あれだ、たとえだバカ野郎!てめーの家庭の事情なんか知るわけねーだろクソが!てめーが無言で適当な相槌うってるから、ちょっとこっちがヒートアップしただけだ!じゃあ、てめー見せてみろよ!俺が納得するようなファンタジー世界見せてみろよこの野郎!」
ああ、なんとうるさい人なのでしょう。ほんと、こういう人と話していると疲れてきます。
「分かりました。では、この編集部のあそこの隅っこの扉見て下さい。非常階段に続いている扉です。あの扉の先に異世界がありますので、ついてきてください」
これは、本当に、勢いだったんです。特に意味はありませんでした。ドナリ編集がヒートアップしたように、私もちょっとヒートアップして思わず適当なことをしゃべってしまったのです。私はその言葉の勢いのまま非常階段に向かう扉に向かい足早に歩きはじめました。
「おう、じゃあ見せてもらおうじゃねーか!」
ドナリ編集はそう叫んで、私の後ろをついてきます。ああうざいなーと思いながら私は扉を開けました。
扉を開けてびっくり。
なんと、そこは森でした。いかにもファンタジー世界っぽい神秘的な森でした。木漏れ日が差し、高い木が何本もたっています。枝がぐにゃぐにゃと不思議なかたちに曲がっており、この枝の曲がり具合がファンタジー感を醸し出しています。ドナリ編集も、後ろをついてきました。そして、私と同じように驚いた表情をしています。
「おい、ここはどこだ?」
「いや分かりません」
ふと後ろを振り返ると、鉄の扉が開いており、編集部の中が見えます。神秘的な森の中に鉄の扉だけがぽつんと置いてあり、現実世界に通じている風景は、それはもうちょっとバカみたいでした。今ならまだ戻れるかも?と思ったのも束の間、扉はバタン!と勢いよくしまってしまいました。森の中に鉄の扉がぽつんと残されたのみの状態になり、途方に暮れる私たち。扉を開閉しても、元の世界に戻れません。
最初のコメントを投稿しよう!