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「おい、なんだよこりゃよ!戻れねーじゃねーか!どうしてくれんだこの野郎!」
「いや、私に言われても困ります。まあ、ちょっと歩いてみましょうよ。どこかに現実世界に戻る別の扉があるかもしれないじゃないですか」
私はとりあえずそう言いました。今起きていることに頭がついていかないところはあるのですが、とりあえず先に進まないといけないな、と自分に言い聞かせたのです。
「くそー!俺、仕事まだ結構残ってたんだぞ!畜生!こんなところに!こんな適当な謎のファンタジーワールドに連れてきやがって!てめーどんな手品だ、これは!」
「いや、だから私もよく分からないですって。あ、どうやら旅人らしき人がこちらへ向かってきますよ」
私たちの向かい側から一人の男性が向かってきます。男性は無精ひげをはやし、やぶけたハットをかぶって、よれよれのスーツを着ており、茶色のナップサックをかついでいます。なんとなく旅人っぽい雰囲気。この人に聞けば色々分かりそう!
「あの、すみません。ちょっと道に迷ってしまったんですが、ここはどうこでしょう?」
向かい側から来る男性はこちらを見つつ、歩みを止めずに無表情で近づいてきます。3メートルほど近づいたところで口を開きました。
「俺の名前はディン・ディディン。旅を続けている者だ。俺もここがどこだかよく分かっていない。俺はひたすら歩くだけだ」
そう言うと足早に歩き、あっという間に私たちの横を通り過ぎていきました。え~!ちょっと、不親切過ぎない?こういうファンタジー世界らしき場所では、もうちょっと説明してくれるものじゃない?
「ちょっとすみません!ほんとに私たち迷っているんです!せめてあなたがどこから来て、どこに向かおうとしているのか教えてもらえませんか?」
私は、ディン・ディディンと名乗る男の後を追い、話しかけます。ドナリ編集は面倒くせーという表情をして動きません。
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