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「おお、あなたは姫ではないか!よくぞ戻った!姫は25年前に行方不明になってしまったのだ。それ以来、私はふさぎ込んでいた。しかし、いつ姫が戻ってきても大丈夫なように城はピカピカにしておいた。さあ姫よ、玉座についてくれ!祝いの宴をひらけ!」
私は、すごい大きなふかふかした椅子に座らされました。そして、すごいきれいなお姫様な感じのきらびやかなドレスを着せてもらえました。さらに宴が始まります。とっても長いテーブルに次々と料理が運ばれてきます。
「姫は何が食べたい?姫がのぞむものを持ってまいれ!」
「そう言ってくれるのはありがたいです。ちなみに、このテーブルにある料理はどんな料理なんですか?見たことがないんですが」
「おお、そうか!久しぶりの我が国の料理、忘れておるのだな!大きな肉はゴブリンのもも肉!悪魔の翼の丸焼き、人魚のうろこのソテー、ドラゴンの心臓、魚人の目玉もあるぞ!どれも滅多に食べることができないご馳走だ!」
あーファンタジーっぽいなーと思いつつ、なんだかあんまりおいしそうではないなーとテンションが下がっていく私。一応、それぞれ一口ずつ食べてみましたが、ゴブリンの肉は固く、悪魔の翼は苦く、人魚のうろこはしょっぱく、ドラゴンの心臓はまずく、魚人の目玉はそもそも不気味で味を感じることができないほどでした。
私は、ためしに中華とイタリアンと日本食を頼んでみました。ダメもとで。ファンタジー世界だと無理かな~と思っていたのですが、シェフが頑張って作ってくれました。良かった。しかもシェフの顔をよく見たら、さっき会った農民のおじさんでした。
ついでに、コンビニのツナマヨおにぎりも頼んでみました。ちゃんと包装したコンビニのおにぎりが出てきました。包装紙には農民のおじさんの顔があり「私がつくった米です」と書いてありました。こういうの粋でいいですね。このツナマヨおにぎりが正直、一番おいしかったです。
「ファンタジーなめてんじゃねーぞクソ野郎!どんな料理だったのか、どんな味だったのか、もっと正確に描写しろ!しかもツナマヨおにぎりが一番おいしいとか、ナメてんじゃねーぞクソが!」
ああ、せっかくおいしいものを食べていい気分だったのに、また魔王の声が聞こえてきました。遠くに連れさられたはずなのに、どうしてこんなに怒鳴り声が聞こえてくるんでしょう。
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