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「いえ、いいんです。わたしも作文であの内容はやりすぎたかなって思いますし……」
机の上に置かれた原稿用紙に目をやると、わたしは学校指定のカバンを机の下に置き、パイプ椅子に腰掛けた。
「違うんだ、矢崎さん。ボクは作文が不適切だから書き直してほしいとか、そういうことで君を呼んだわけじゃない」
先生はくせっ毛を左手でのんびりとかきあげながら釈明する。
ハニカミ屋の光彦くんも同じような仕種をよくやっていた。ちょっとなごんでしまう。
「何点か確認しておきたいことがあるだけだよ。他の先生に聞かれたくない話もあるんじゃないかと思ったから指導室にしたんだ」
口調は柔らかい。
だけど、目にかすかに鋭さが混じったような気がした。
印象を少しだけ修正する。
この人、油断できないかも。
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