江住玲一郎の生徒指導

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「森嶋光彦くんと佐藤勇気くん、ふたりの生徒が続けて亡くなった事件は、新聞でも報道されたみたいだね」 先生はA4サイズの紙をカバンから取り出し、わたしの作文の隣に置いた。 図書室で新聞縮刷版からコピーしたのだろう。事件に関する記事が用紙いっぱいに並べられている。 ちゃんと裏とってるじゃないですか……。 「脚色は『ヨンデヨ』の落書きが『シンデヨ』になっていたところかな?」 先生の口調はおだやか。口元も優しげな微笑みを絶やさない。 でも、なんだか……、 これってわたしの緊張を解くためじゃないよね、たぶん。目が笑っていないもの。
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