ハローワールド

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 制服のリボンを外しながら“まさか”を聞いた当の葵が、浮かない顔をしている美咲を見た。 「……パンツ忘れた……」  水着を家から着て来て自宅に下着を忘れるなんて失敗も、簡単には無くならなかったようだ。  これから中学生水泳全国大会の大事な予選を控えているのに、美咲は思わぬ事態に困惑したのだった。  本当に下着を忘れてきた美咲に、着替えの途中で下着になったまま葵が大爆笑した。  笑い声に、女子更衣室内の視線が葵に注がれるが、そんな事は気にしない。 「あはははははは、おかしい。本当に小学生かあんた。その歳で家から水着着て来て、パンツ忘れるって!」  周囲の同情の視線が美咲に「あの子パンツ忘れたんだ……」と突き刺さった。 「返す言葉もないです……」  美咲は、頬を染めて恥ずかしそうに、少しシュンとした。  家で忘れ物チェックをしようとしたら、兄からメッセージがあって返信に気を取られているうちに忘れ物チェック自体を忘れた事を思い出し「お兄ちゃんめ、ぐぬぬ」と恨めしく思う。  それから、本日の予定を思い出して気が滅入った。  仮に、直帰なら濡れた水着を下に着ていようが、ノーパンだろうが、ギリギリ、本当にギリギリだが、イケそうだと考えていた。  だが、今日は都合が悪かった。     
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