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思わず「ください、だろ?」と言われる気がして自分で付けてしまった。
「しょうがない……」
葵がくすぐるのを止めると、美咲は早速、iDでメッセージを送ろうと視界に出ているウィンドウに意識を集中し始めた。
慣れれば簡単に操作できるのだが、意識を集中させてiDに命令するのにはコツがいる。
今の美咲は、自転車で例えれば、地面を蹴りながら進んでいる様な状態なので、一々操作がぎこちない。
すると、そんな美咲を見ながら、葵が言った。
「サキッチ、あんたまさか、自信無いの?」
「なっ!?」
美咲は、あと一歩で母親に「パンツ忘れた、届けて」と言う情けないメッセージを送信出来たのに、送信ボタンを押す寸前で意識の集中を止めてしまった。
葵は、美咲の負けず嫌いな性格を的確に突いて来た。
美咲のiDに搭載されているサポートコンシェルジュAIであるメイド少女のロッテは、情けない文面の手紙をどうすればいいのか、美咲の命令を視界の端で待っている。
「全国、行くつもりでしょ? 今年は優勝するんでしょ?」
更衣室は、気が付けば二人きりになっていた。
「ま、まあ、そうですけど……」
「じゃあ、大丈夫じゃない。自分を信じて!」
葵は、ガンバレみたいな感じで言うが、明らかに楽しんでいた。
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