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「ぐっ、じゃあ、私が全国決まったら、葵ちゃん本当にパンツ買ってくるんだからね? 約束だよ。終わったらすぐだよ!」
「よし。ダメだったら、一日ノーパンね。約束だからね」
葵は面白そうに、早口で言った。
術中にハマっている事は分かっているのに、我慢できずに無用な約束をしてしまった。
美咲は心の中で「私のバカバカ」と思った。
すると、葵は美咲に手の平を見せた。
別に、皮膚モニターによる画像も何も表示されていない。
「握手?」
美咲は、間の抜けた顔をして葵の手を握った。
「パンツ代」
美咲は素直に「なるほど」と思った。
葵は買ってあげるとは言っても、自腹でとは一言も言っていない。
それから美咲は、バッグから小学生の男子が使いそうなボロい三つ折り財布を出すと、マジックテープをビリビリと剥がして開け、自分で見た後に無表情でそっと葵に中身を見せた。
ボロ財布は美咲の兄が小学生の時に使っていた物で、当時かっこいいと思っていた美咲がおさがりで貰った物だった。
物は基本的に壊れるまで使う派なので使い続けているが、糸がほつれていたり、かなりガタが来ている。
「あの、あのですね、実は、言いにくいんですけど、見ての通り今、余分なお金が無いといいますか、その、財布に余裕が……」
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