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葵は、美咲の財布と財布の中身を見ると、何か入れたくなるぐらい切ない気持ちになった。
中学三年生の財布とは思えないのは、見た目だけでなく中身もである。
試合終わりにジュースの一本も買えない。
電子マネーで支払いをする為の家族カードの支払い能力の残高表示は、たったの80円で、クレジットカード機能も無い。
iDに登録されている支払いカードと共通なので、ネット通販も出来ない。
財布の中身で一番価値があるのは、一駅区間一ヶ月の通学に使っているチャージ式の定期カードなのは、間違いなかった。
ちなみに、その定期カードの期限は、しっかりと切れている。
「……はぁ、パンツと、あとブラも揃いのプレゼントしてあげるから。本当に勝ちなさいよ」
そう言うと葵はiDで通販のウェブページを開いて、美咲にも見える様に腕に表示した。
「ありがとっ! 私頑張るね!」
美咲がわざとらしく、着替えている葵に抱き着くと「ちょっと、わかったから、美咲、邪魔!」と邪険に引きはがされた。
美咲は抵抗して、葵のパンツを引っ張り始めた。
これは完全に、ただの調子に乗った悪ふざけだった。
「ゴムが伸びる! こらっ、やめっ、やめろっ!」
美咲は、葵に頭を殴られた。
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