ハローワールド

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 美咲は、内心その値段に心が揺れ動いたが、悟られぬように文句をつけた。  黒レースの下着など、見せたい相手などいないし、美咲には早すぎるのだが、自分が買えない物となると途端に魅力的に見えるのも事実である。  しかし、必要ない物は、やっぱり要らないと言うのが美咲の考えだった。 「じゃあ、今日一位だったらね」 「そんなぁ……」  こうして美咲は、今日の予選で負ける訳にいかなくなったのだった。  これが美咲にとっての日常であった。 「サキッチ、呼ばれてるよ~」  プールサイドで他の競技を面白そうに見ていた美咲は、葵に指で背中をなぞられてビクッと気付いた。 「ああ、うん」  ようやく順番が来たかと、すっくと立ち上がる。  すると、その引き締まったお尻を、また葵がペチンと叩いた。 「ちょっと!?」  素直に驚く美咲に、葵は「かっこいい所見せてよ!」とエールを送った。  美咲は、親指を立てて満面の笑みで答えた。  プールのスタート地点まで歩いていると、声が聞こえてきた。 「ミサキ! ガンバ!」 「ナキリ! 期待してるぞ!」  応援席に同じ学校の友達数人が応援に来てくれていた。  美咲は、大きく手を振って返した。     
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