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友達には、まあまあ色々な呼び方をされるが、初対面の半分には「ヒャッキさん?」と疑問符で呼ばれる。
百鬼と書いて“なきり”と読む。
これが美咲の苗字である。
年齢は、昨日で15歳。
背の高さと成績は、クラスで真ん中ぐらい。
肩に届かないぐらいまで伸びた髪は、今は水泳キャップの中に納まっているが、キャップを外せば黒のストレート。
目鼻立ちも悪く無く、黙っていれば清楚な美少女に見られない事も無い。
だが、自他共に認める「ずぼら」な性格が災いして、清楚なんて誤認は日々の生活の中で既に正されている。
中学に入ってから親友の葵に誘われて始めたので、水泳の経験はまだまだ浅い。
だが、今では葵よりも早く泳げるし、こうして大会の予選に出る事も出来る。
兄がいるせいか、人に頼ったり、教えてもらう事が上手く、そこに負けず嫌いな性格が合わさって、部内では一応の有望株だし、友達も多い方だ。
友達の声援に応えながら美咲がプールに向かって歩いていると、変な音が聞こえた気がした。
「?」
美咲が音の原因を探して、首をキョロキョロとする。
「百鬼どうした、大丈夫か?」
美咲の異変に気付いた顧問兼コーチの木村先生が、心配そうに声をかけてきた。
「何か聞こえなかったですか?」
「あれ以外でか?」
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