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木村先生は、スタートの電子銃声を指した。
美咲は、首を小さく縦に振った。
「いんや、耳鳴りか? 気圧がおかしいとかは無いか? 耳抜きは?」
「えっと、たぶん気のせい、だった……のかな? うん、もう大丈夫です」
美咲は、そう言うと気にしない事にした。
「いいか、練習通りにやれば十分狙えるんだ。集中していけよ、同時にリラックスだ」
「はい!」
木村先生の漠然としたアドバイスを素直に聞き、気を取り直す。
ゴーグルの明度を調整し、最適にして着用しプールに入った。
視界に見えるiDのウィンドウには、利用制限の文字が出ていた。
こういった競技会場では、不正に使おうとする者がいるので、インプラントナノデバイスの類は強制的に利用制限される。
具体的には、競技における最適解のモーションを表示してガイドする事で、本来の実力以上の動きをナビゲーション出来てしまうのだ。
練習時には大変有用だが、本番では一切の使用が認められていない。
なので、美咲のiDも一時的に緊急連絡でしか電話をかけられない様に自動的に制限されていた。
美咲は、もしかしたらノイズは、この利用制限のせいで聞こえたのかもと思った。
「はぁ……ふぅ……」
深呼吸をした。
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