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こんな事がありえるだろうか?
いつ連れて来られたのか、美咲は気付かなかった。
美咲が泳いでいる場所は、見たまま表現すれば、どこかの地底湖らしい。
水温がプールよりもかなり冷たく、水の色は旅行で一度行った沖縄の海よりも青く、透き通っていた。
しかし、湖底は海と違って 珊瑚など無く、凹凸の激しい岩場が広がっているだけだ。
水質は真水で、口に入ってもせいぜいミネラルの味しかしない。
漠然と、夢の様な光景だなと思った。
「あの、え?」
勝手に動揺の言葉が口を出た。
「あ、あの! おーい!」
喋ってみるが、声が洞窟内の空気をかすかに反響するだけで返事は聞こえない。
狐に化かされた様な気分とは、こういう事か?
そんな気持ちのまま、ゆっくりと平泳ぎで岸に向かう。
それしか、するべき事が思い浮かばない。
その時、自分の下に、何か大きなモノがいるのが見えた。
恐怖を感じつつも、見ずにはいられない不安が勝り、ゴーグル越しに水中を見てみた。
太陽光で湖底には水が影を作っていた。
そこには、地底湖を悠々と泳ぐ巨大な魚が見えた。
それが本当に魚なのか、実は蛇なのか、そんな事は、初見の人間に分かる筈がない。
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