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もしかしたら、予選で溺れて、悪い夢を見ているのかもしれない。
目を開けたら医務室で、みんなが心配している。
そんな夢オチと言う事を、全力で期待した。
だが、目を開けても、やはりそこは見知らぬ、巨大な鍾乳洞だった。
iDの表示では、2040年8月17日午前11時03分。
気が付けばiDの利用制限は解除されているが、状態はオフラインで、GPSの使用も不可になっている。
ダメ元で頬をつねるが、普通に痛い。
美咲は、自分の身に何が起きたのか、自分はどうすればいいのか、まるで見当がつかなかった。
これが、精神的には無人島に運よく流れつく以上にきつかった。
自分がもとの生活に戻る為のパターンが、美咲の脳内には無いのである。
無人島なら、砂浜にSOSや、狼煙、食べ物の確保と、体験が無くともフィクションでの知識がある。
そんな知識を生かさずとも、iDが体内にある今なら無数の衛星基地局を利用すれば、地上どこからでもGPSと電話で助けも呼べるのだ。
美咲は、キャップとゴーグルを拾うと、目に入った地底湖に隣接する小高い岩場に登り始めた。
小高いと言っても、登りやすい階段がある訳ではないので、登るのは大変だった。
高さは四階建ての建物ぐらいある。
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