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岩肌に掴まり、足を踏ん張り、普段使わない筋肉の疲労を全身に感じ、ぜぇぜぇと息を乱しながらなんとか登り切る。
周囲を一望出来るそこから見えた景色は、生まれて初めて見る物だった。
顔をあげ、視界が開けた時の第一声は、「きれい……」だった。
景色だけで、こんなに心が震える事があるとは思わなかった。
湖の中からも見えていた鍾乳石のつららが地面にまでのびて出来た巨大な柱に、支えられた広大な洞窟。
柱は、アイスピックの様に先端が細い物もあれば、エアーズロックの様な超巨大な塊まで、様々な大きさがあった。
所々天井が崩れて日光が真上から差し込んでいる光景は、高所から見れば大地を照らす模様に見えた。
地下洞窟にもかかわらず、地面や壁面には苔や草花が生え、日が当たる所には、広大な草原や森まであった。
日が一切当たらない部分は、植物の生育が極めて悪く、場所によっては何も生えていないので、日照環境は一目了然だった。
博物館で見る恐竜の化石の様な、巨大な生物の骨らしきものが遠くの地面から生えているのが見える。
更に遠くの森の中で、巨大な木々を揺らして何かが動いているのも見えた。
後ろを振り向くと、美咲がつい先ほどまで泳いでいた地底湖が広がっていた。
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