前兆

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 だが、その下には、大蜥蜴に跨る旅の一団が隠れている深い森があるだけで、着陸する場所などは無い筈である。 「どうしてこんな所に、あんなものが」 「まさか、俺達を探して!?」  仲間達が動揺を口にすると、フードの男が冷静に遮った。 「落ち着け、まだ見つかったと決まった訳じゃない。急いでここを離れるぞ」  フードの男の言う通り、空中戦艦からの、この一団に対する動きは、まだ見られない。  仮に、目的が雲の下での人探しの類なら、哨戒艇が既に出ていてもおかしく無かった。  仲間達が頷くと、さっき危険を知らせた臆病な大蜥蜴が、再び鱗を鳴らし始めた。 「おい、静かにしろ、今はまずい、落ち着け!」  興奮した大蜥蜴のパートナーである青年が、どうにか臆病者を落ち着けようと必死に首の下を撫でるが、まるで言う事を聞く素振りを見せない。  それが目の前の危険以上の脅威が迫っている事に他ならぬ事を、三人は瞬時に理解した。 「急げ、すぐにここを離れるぞ!」  三頭の大蜥蜴とその主人達は、頭上の空中戦艦から隠れながら、どうにかその場を離れようと森の中を疾走し始めた。  翼の被膜を畳んだ状態で、大蜥蜴達は森の木々を避け走る。     
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