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起きるとしても、獣の呻き声を聞く限り、良い想像が出来なかった。
間違っても、ここで夜を迎えたくはない。
本音を言えば、とにかく、誰でもいいから、誰かに助けて欲しかった。
そもそも部活の大会と高校受験を控えた日本の女子中学生に、サバイバルなど無茶ブリも良い所である。
なのに、現実はチラチラと無茶ブリを強要して美咲の様子を見ている。
こうなると、助けを求めて移動するにしても行く当てがないと動きようがない。
森の中で遭難したら、人を探す以前の問題である。
周囲を注意深く見ると、さっきは気付かなかったが森の向こう側に人工物が見えた。
iDのカメラ機能を起動すると、視界を十倍にズームできた。
それは、建物の屋根に見えた。
人の痕跡を見つけただけで、こんなに救われるとは、美咲は想像したことも無かった。
他にも何か無いか周囲を観察し、何も見つけられない事を確認した。
腹を決めると、岩場をトントンとジャンプして降りていき、獣と遭遇しない事を祈りながら屋根が見えた方向へと歩き出した。
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