前兆

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 走り出すと他の大蜥蜴達も、遅れて危険に気付いたらしく警戒音を鳴らし始め、気が付けば森全体の生き物と言う生き物が、それぞれの警戒音を鳴らしていた。  こんな事は初めてだった。  仲間達は不安そうに周囲の森の異常事態に息を飲むが、フードの男は大蜥蜴の背中から雲の中を見上げた。  突然、森中から音が消えた。 「何か来る……」  フードの男が呟くと、雲に大穴を開けて現れた何かが、空中戦艦の上部装甲に衝突した。  例え、戦艦同士で衝突しても、こんな事にはならないであろう、衝突の衝撃によって空中戦艦は下方に大きく沈み込み、周囲には巨大な船体の破片が散乱していく。  地上は、残骸の雨が火山の噴火の様に降り注ぎ、世界の終末にでも遭遇したかのようであった。 「早く逃げろ! 進め! とにかく進むんだ!」  瓦礫の雨をかいくぐり、なんとか空中戦艦の下から脱出を試みるが、様々な大きさの瓦礫が周囲に降り注いでいるので絶対に安全と言える場所は、この森の中には、もはや存在しない。  瓦礫が地面に衝突すると、その衝撃で木々が吹き飛ばされ、その木によって別の木がなぎ倒されと、破壊のドミノ倒しがそこら中で起こり、気にするべきは頭上だけでは足りなくなっていた。  何かに衝突された空中戦艦は、高度を下げたものの、まだ浮力を維持していた。     
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