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船体のバランスを失った空中戦艦は墜落を始め、その乗組員が外に投げ出されて、瓦礫となり果てた船体と一緒に地面に落下していく。
「無事か……」
土塗れになったフードの男が仲間の安否確認に身体を起こし、洞穴の外を警戒して見る。
戦艦の瓦礫が森の木々を破砕しながら、轟音をあげて地面にぶつかった。
数百メートルは距離が離れているが、逃げ込んだ洞穴にまで、その揺れが響く。
すると、墜落に遅れて戦艦の動力炉が臨界に達したのか、眩い閃光が周囲を照らし……
「悪い、まだだった」
フードの男が仲間達の上に覆いかぶさった。
男を庇おうと、相棒の大蜥蜴が男と閃光の間に自ら割って入り、腕の被膜を広げて覆いかぶさると、遅れて墜落現場から爆音が響き、その後に激しい衝撃波が森を通り過ぎた。
竜は、空から空中戦艦が爆散したのを見届けると、目的を果たしたのか雲の上へと穴を通って帰っていった。
その時フードの男は、竜と目があった気がした。
森の炎は、雨で鎮火が始まっているが、雲に大穴が開いている空中戦艦の残骸だけは、消火の範囲外で激しく燃え続けていた。
乗組員も、生存は絶望的だろう。
そこにいた全員が、大きな流れの中に、知らぬ間に身を置いていた事に気付き始めていたが、それを口に出す者はいなかった。
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