ハローワールド

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ハローワールド

 2040年。  人工知能の急成長、火星移民計画、軌道エレベータ建設、ダイソンスフィア計画の始動と、人類は自らの予想を上回る速さでの進歩を遂げていた。  バイオナノマシンの一般化は、電話とパソコンの境界を曖昧にしたように、人とデバイスの境界を曖昧にした。  しかし、それは文明の話である。  どんなに科学が発展しても、人間の悩みはいつの時代も大きく変わる物ではない。  ホモサピエンスが地球上に誕生してから今まで、ただの一度も愛に悩まぬ人類は地上からいなくならなかったし、この先も消える事は無いだろう。 「あんた……まさか、また下に水着、着てきたの? 雑って言うか、ズボラって言うか……ははぁ、昔みたいに下着忘れたりして無いでしょうね?」  親友の葵は、軽い冗談で言ったつもりだった。 「そんな小学生じゃあるまいし」  美咲は、そう言いつつも不安にかられて「はっはっは、まっさかぁ」と言いながらロッカーに入れた自分のスポーツバッグの中を探った。  すると、小さい声で「あれ……」と言った。  先ほどまで明るかった顔色は、途端に曇っていく。  その顔には“うそでしょ”と書いてあった。 「どうかした?」     
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